一見違うもの同士を繋げて、新しい企画を生み出すアイデアの源とは

一見違うもの同士を繋げて、新しい企画を生み出すアイデアの源とは
Text by Minori Kasai
Photographs by tsukao

企業のブランディングに携わる人は、普段どんな視点で、どのようなインプットをし、仕事に繋げているのでしょうか。今回は、不動産関連やさまざまな企業のブランディングに携わる、アマナのプランナー濱谷俊輔にアイデアのタネについて聞きました。

アイデアのタネを教えて!

普段、意識してインプットすることはないのですが、もともと文字や言葉からインスピレーションを受けることが多いです。だから、インプットしたいときは、書店に行くことが多いかな。中でもSPBS本店は、よく訪れる場所の1つ。

以前、僕自身がここで働いていたのもあるのですけど……。SPBS本店は、棚ごとに担当が分かれていて、セレクトされた本のラインナップや、この本の横にあの本を置くといった並べ方も含め、担当者の個性にあふれているんです。まるで“他人の本棚”を覗いているようで、時間を忘れて楽しんでしまいます。あと、普通の書店ではなかなか見かけないリトルプレスの本も置いてあったり、広い店ではないのですが、ここを訪れるとなにかしらの発見や刺激があります。

株式会社アマナ/メディアコンテンツ企画開発部/プランナーの濱谷俊輔さん
株式会社アマナ メディアコンテンツ企画開発部 プランナーの濱谷俊輔さん

それから、本が好きなのと同じように、雑誌も好きなんです。今でも、『relax』(マガジンハウス、2006年休刊)や『STUDIO VOICE』(INFASパブリケーションズ)など昔のバックナンバーは大切にとってあります。いまだに僕にとって雑誌は身近な存在で、アイデアの源の1つでもあります。雑誌のジャンルもさまざまで、女性誌などのファッション誌から美容雑誌、人文哲学系なども手に取ります。というのも、前職の服飾&アート系専門学校に勤務していた頃、学生達の文化を理解して同じ目線で話ができるといいなと思い、自然とよく読むようになったのがきっかけ。でも実際、手にとって見てみると女性誌って、特集の切り口が媒体によってさまざまだったり、好きなものに対しての視点や理由付けに気付きが多くて、面白いんですよね。単純に誌面もカラフルで見ていて楽しいですし。

日々触れる情報は、自分の興味や所属している会社に関連する情報に偏ってしまいがちです。でも、普段から、いろんな雑誌やカルチャーに接していると、全く違う業界でも関連するものが見えてくる。組み合わせや切り口の視点を変えるだけで、面白い企画になると思うんです。
たとえば、「どんなシチュエーションだったら、人はくつろいだ気分で商品に触れるんだろう」と思いを巡らせながら、展示会の方向性を考えていたとき、ふと手に取ったコーヒー特集からヒントを得て、展示会にコーヒースタンドを設置するといった発想に繋がることもあります。

雑誌の魅力は、1冊の中にファッションがあったり、映画や音楽などのカルチャーや読み物があるなど幅広い情報が詰まっていてそんな発想が生まれやすいところだと思います。そこから新しいコトに触れて、視野が広がっていくきっかけになりますね。

SPBS本店

SPBS本店

渋谷と代々木公園をつなぐ“奥渋”エリアにある本と編集の総合企業。コミック、カルチャー、エンタメなどジャンル別に分類された棚には、それぞれの担当スタッフが思いを込めて選書した本が並ぶ。各棚の動きなどを毎週分析し、どうすれば「思わず手に取ってもらえる」見せ方ができるか各スタッフが工夫。いつでも訪れる人にとって新鮮な本のセレクトを心がけている。
https://www.shibuyabooks.co.jp/

アイデアのネタ帳を見せてもらいました

ネタ帳としてA4サイズのニーモシネを愛用中。空間をイメージしながら企画を考えることが多いため、ミニサイズのメジャーも持ち歩いている。
ネタ帳としてA4サイズのニーモシネを愛用中。空間をイメージしながら企画を考えることが多いため、ミニサイズのメジャーも持ち歩いている。

頭の中を整理するときは、このA4サイズのニーモシネのノートと0.3mm以下のペン先の細いものを使っています。ノートは、表は方眼、裏面は白紙のタイプですが、僕が使うのは方眼のページだけ。後で見返しやすいよう、日付やクライアント名は、必ず書いておきます。書く内容は、頭の中のアウトプットだったり、らくがきのような絵や空間パースだったり、セミナーに参加した際のスマホのメモで必要なものを書いたり……いろいろです。特にルールはないのですが、このノートが、仕事をする上でさまざまな企画のベースになっています。綺麗な言葉だけでなく、スラングや人が話す言葉、本を読んで「いいな」と思ったことも書いたりしてますね。

書くといえば、ノートではないのですが、“パーマセルテープ”というのを知ってますか? 撮影で機材を止めるときなどに使う紙のテープなんですけど、そのテープに、気になった単語とかフレーズとか、好きな曲の歌詞を書いて、自宅の壁に貼ってるんです。やっぱり言葉とかから影響を受けることも多いし、書くことも好きなのかもしれません。

「インテリア事例」などテーマやクライアント別にカラフルに分類されたGoogle Keep。
「インテリア事例」などテーマやクライアント別にカラフルに分類されたGoogle Keep。

実用的なところでは、PCやスマートフォンなどのデジタルツールも欠かせません。よく使うアプリは、Google Keep。気になるWebページのURLをコピペして、テーマや案件ごとに分類して管理しています。このメモを見るのは、企画書を書く時に、PCでチェックすることが多いですね。あとは、スマホのメモ機能は、セミナーでノートが取れない時に活用しています。このメモは、あとで見返しながら、ノートに書くこともあります。

プランナーの頭の中を知る、5つの質問に答えてもらいました

Q1.今までに影響を受けたモノ・コト・ヒトは?
A.学生時代に通っていたレコード店
学生時代はよくレコード店や雑貨店に出入りしていて、そこの店長や周りの大人の方々に本や音楽、カルチャーについて教えてもらったことで、世界が一気に広がりました。その後、上京してから、よく読んでいたフリーマガジンの編集部で働いたり、SPBS本店に関わったりと、学生時代の出会いがきっかけかもしれませんね。

Q2.よく見るWebサイトは?
A.WebサイトよりもGoogleアラートやメルマガをチェック
SNSはよく見ていますが、お気に入りのアカウントがあるわけではなく……。情報収集という視点では、Googleアラートで“アート”や“ウェルビーイング”“サスティナブル”といったキーワードを設定して、関連のニュースがアップされるとお知らせがくるようにしています。この機能のよさは、“アート”という言葉だけで、いろんな視点での新着情報が集まるので、俯瞰でものごとが見られるのがいいんです。ニュースレターもいくつか読むのですが、最近のお気に入りは、『LOBSTRR』かな。Takramの佐々木康弘さんたちの視点で、世界中のニュースが拾えるので、毎週届くのが楽しみですね。

Q3.アイデアに詰まったときにどうする?
A.あえて言うなら、飲みに行きます
アイデアを形にするまでには時間がかかるのですが、アイデアに詰まること自体は、実はあんまりなくて……。あえて言うなら、風呂に入ったり、飲みに行ったりしますね。バーなどで偶然、隣に座った知らないおじさんと話したことが、究極のインプットになることもあります(笑)。

Q4.気になるブランディング事例を教えて
A.パタゴニアと資生堂です
パタゴニアは、環境保全に対する企業理念だったり、コンテンツではなくコンテクスト型のブランディングに注目しています。資生堂はさまざまなラインナップがある中で、それぞれの商品の打ち出し方や見せ方、切り口など特徴があって総合的に参考になります。季刊誌『花椿』も発行していたり、単純にファンです。

Q5.クライアントと仕事をする時に大事にしていることは?
A.ちゃんと話を聞くこと
僕は仕事をする中で、クライアントの“心”に耳を傾ける時間が一番長いと思います。アナログかもしれませんが、相手の求めている本質を引き出して、一歩先の提案をするには、じっくり話すしかない。一度でも関わった以上、信頼関係を築きたいですし、時間はかかりますが、今後も大切にしたいですね

まとめ

書店のおもしろさは、さまざまなジャンルの本を扱い、書店全体が編集されているところにあります。特に、SPBS本店は、書店そのものの編集力が高く、”何か”を求めて訪れた人の好奇心を満たしてくれます。店内をくまなく歩きながら、タイトルを見て、今何が注目されているのかを感じたり、雑誌をパラパラとめくるだけでも、雑誌がターゲットとしている読者に響く言葉を知り、その世代の文化に触れるきっかけにもなるはずです。アイデアに詰まった時などは、そんな個性的な”本屋さん”に立ち寄り、普段、馴染みのないジャンルの棚を眺めてみたり、新しい発見に触れてみるのもいいのではないでしょうか。

>>【関連特集】企業の未来が変わるかもしれない、ブランディングってなんだろう?

掲載元:VISUAL SHIFT、一見違うもの同士を繋げて、新しい企画を生み出すアイデアの源とは

PROFILE

濱谷俊輔

株式会社アマナ/チーフアカウントプランナー
濱谷俊輔

株式会社アマナ/チーフアカウントプランナー
濱谷俊輔

長崎市生まれ。クリエイティブ系専門校の企画営業として様々なクリエイターを招いたイベントやワークショップを多く手がける。その後カルチャー誌の編集やアートイベントの企画・運営などを経て、2014年より株式会社アマナ入社。ヴィジュアルコミュニケーションを軸にしながら、これまでの経験や知見を生かした企画提案・プロデュースを行なっている。
学生時代から紙媒体を愛し、過去にはヘビメタ誌『BURRN!』や建築誌を愛読していたことも。現在も面白いフライヤーやZINEを見つけたら手に取らずにはいられない。絵も好きで、ギャラリーや美術館でインスピレーションをもらうことも多い。

MEDIA

VISUAL SHIFT

VISUAL SHIFT

VISUAL SHIFTは、企業の課題を解決するヒントをクリエイティブ視点で紹介するアマナのオウンドメディア。ビジネスに役立つ基礎知識や事例、各分野のキーパーソンへのインタビューをお届けします。