「Life goes on」——。このフレーズは「それでも人生は続いていく」というニュアンスを含んでいるわけですが、ウィズコロナの時代になんともマッチしたキーワードではないでしょうか。
私が代表を務める株式会社ヒーコが運営するウェブマガジン「xico(ヒーコ)」は、「あたらしい写真の楽しみを発見し、発信する」をコンセプトに、フォトグラファーとライフスタイルに関する情報を発信しています。ご寄稿いただいているフォトグラファーの多くは、2000年以降のデジタルカメラの大衆化やInstagramなど写真を主体としたウェブサービスが隆盛したのを背景に、写真活動を始めた方が多く、われわれにとって「SNSと写真」というのは切り離せないキーワードとなっています。
写真を趣味として日々の癒しにする人、写真を効果的に活用してプロモーションする人、写真を仕事にする人、さらにはプロとして活動しながらSNS上で作家活動を行う人など、 写真との付き合い方はさまざま。
なかには、SNSをはじめとするウェブサービスを活用しながら新しいスタイルを切り拓く方も多く生まれています。われわれはそれらの活動をしている方たちを「フォトグラファー2.0」と位置づけ、SNS・デジタル時代における新たなフォトグラファー像と考えています。
このたびのコロナ禍を受け、多くの方や企業がそうであるように、彼ら・彼女ら取り巻く環境も一変。「SNSと写真」のキーワードにおいても少なからず影響を受けました。
とはいえ、「Life goes on」。それでも日々は続いているわけでして、今回はSNSを中心とした写真ストリームに身を置く立場として、ウィズコロナにおける「SNSと写真」について、少し書いてみたいと思います。
「SNS」とは、文字通りソーシャルネットワークと密接に関わっています。全世界的に #STAYHOME な日々が続いてもSNSのコンテンツ量は衰えをみせず、むしろSNSでの滞留時間は増えているようにすら感じられます。写真活動という観点で考えると意外ですが、ライフスタイルという観点で考えると、生活の総量が減ったわけではないので納得の結果とも言えます。
そしてこのような状況下でもわれわれの周りを取り巻くフォトグラファーは、変わらず写真に関わり続けています。これがフルタイムのフォトグラファーであれば生計に対するモチベーションとして理解できます。しかし写真を撮れないことが生活を直接的に脅かすわけではないにもかかわらず、写真へのモチベーションが落ちているようには見受けられません。
今回ご紹介するヒーコにご寄稿いただいているフォトグラファーのふたりもその代表例です。
写真家の伊藤公一氏は、日頃より生活に密接した写真を撮り続けています。2000年以降の写真ブーム以前から活動を続けていますが、今回のコロナ禍を受けて #STAYHOMEGOHAN という取り組みを行っています。
生活をしていくうえで発生する自炊という行為を写真におさめているのですが、これまでのインスタ映えやエモに代表される「写真のための写真」トレンドと異なるのは、完成された料理のみを写すのではなく、行為の過程や結果まで写真におさめていることです。つまり、撮るための食事ではなく「生活のために自然とある食事」を写真として残しているのです。
映えを意識する「写真のための写真」は、ウィズコロナ期の行動が制限されるなかでは少なからず制限を受けます。だからこそ、私には #STAYHOMEGOHAN のような生活の延長線上にある写真活動が、ライフスタイルとしての写真のあり様を端的に示したように感じられました。
今回の #STAYHOME キャンペーンで、同じくライフスタイルに焦点を当てた作品を精力的に制作している方に、写真家・デザイナーとして活動されているNana*氏がいます。彼女は「お茶の時間」や「食事の時間」をテーマに、広告ビジュアル的な半歩先のクリエイティブからは抜け落ちてしまいがちな普遍的かつ誰しもが持っている“時間”を、極めて上質に写真表現として作品化されている点に多くのファンがついています。
これはInstagramやFacebookが発信している #STAYHOME #おうち時間 といったウィズコロナ期における社会トレンドに対して写真家ができる答えのひとつのようにも感じられました。
それは、写真のもつ土壌を再認識する良い機会でもありました。
写真を通して何かしらのメッセージが伝わるように構成する広告的なアプローチとは異なり、個人がダイレクトに接するSNSというプラットフォーム上では、このようにライフスタイルとしての写真こそ親和性が高く、それはウィズコロナの時代で改めて明らかになった「SNSと写真」の関係値ではないかと捉えています。
満足に移動やアクティビティを行えない環境であっても、「SNSと写真」の掛け算は変わらず私たちの期待に応えてくれています。そしてクリエイティブの可能性を信じて取り組むことで、新たな可能性が生まれるであろうことも、想像に難くありません。
アフターコロナにおけるニューノーマルが、どのようなかたちになるか、私にはわかりませんが、世の中の変容にともなって写真のトレンドが変化することはあっても、「SNSと写真」いずれもがライフスタイルに寄り添っている限り、変わらず私たちの人生や心をほんの少しだけ豊かにしたり、より大切なものにしてくれるのではないかと信じています。 ヒーコでは、アフターコロナの世界においても、「SNSと写真」という切り口で、ライフスタイルをすこし豊かにする企画を考えていきたいと思います。
株式会社XICO代表取締役/株式会社アマナ コミュニティマーケティングマネージャー
黒田明臣
株式会社XICO代表取締役/株式会社アマナ コミュニティマーケティングマネージャー
黒田明臣
デジタルネイティブな写真活動を通して、フリーランスエンジニアから商業写真家へキャリアシフト。ビジュアルコーディネートを主事業とする株式会社ヒーコを立ち上げる。SNSと写真をテーマに、企業のビジュアル課題について企画から制作まで幅広く担当。エンジニアリング、マネジメント、写真と異なるスキルをミックスした視点でマルチに活動している。主な活動には、ビジュアルを活用したプロモーション企画からコミュニティマーケティング、SNS時代のフォトグラファーキャリアに関する執筆、イベント、セミナー登壇など。
xico
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