不確実な時代における「新しい価値観」という名の希望

不確実な時代における「新しい価値観」という名の希望
Text by Natsuki Tokuyama
Photograph by Rumi Ando [TOP]

まずはじめに、新型コロナウイルスに罹患され、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、医療に従事されている方、感染対策に従事されている方、感染拡大を抑えるべく尽力されているすべての方に感謝いたします。

いま、クリエイティブに何ができるのか

新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックが起きたいま、クリエイティブに何ができるのか。企業が抱える課題解決をクリエイティブでサポートしてきたアマナ、そしてそのオウンドメディアである「VISUAL SHIFT」に、果たして語れることはあるのか。いまだ感染者が増え続け、刻一刻と変わりゆく状況のなかで、見通しのきかない未来について語ることはとても難しいと感じます。

新型コロナウイルスは世界に劇的な変化をもたらしたように見えます。しかし本質的には、世界が大きく変わることは、おそらくないでしょう。今回、あらゆる場面において表出した問題のほとんどは感染症拡大以前から存在しており、世界的なパンデミックを契機に、よりくっきりと見えるようになっただけと言えます。
リモートワークを実施して感染リスクを最大限抑えながら、オンラインやバーチャルを駆使して社員や顧客とつながり、この状況においても社会へ価値を提示して評価されている企業は、コロナ禍以前から常に時代の変化を敏感に感じ取り、変わりゆく価値体系のなかでどのような体験を提供するかを考え、準備してきたはずです。

それでも、この世界的なパンデミックと、それに伴って引き起こされた経済活動の縮小によって、すでに存在していたあらゆる危機を自覚し、新しい価値体系を踏襲した事業のあり方や販売の仕組みを模索しなければならないと感じている方々とともに、これからのビジネスについて考える場を持ちたいと思い、「VISUAL SHIFT」では特集「変わりゆく企業のコミュニケーション」をスタートしました。
企業がコロナ禍で顧客とどのように関係性を築いているかを紹介したり、この不確実な時代に持つべき視点をクリエイターに伺ったり、オンラインコミュニケーションが主流になるなかでビジュアルをどのように活用できるかを紹介するなど、さまざまな切り口で記事を配信しています。

特集「変わりゆく企業のコミュニケーション」
特集「変わりゆく企業のコミュニケーション」

まず、遊んでみる

今回の特集でさまざまな企業の方やクリエイターにお話を伺うにあたり、共通していたことがあります。それはビジネスに「遊び」の要素が必要だということです。必ずしもすべての方が「遊び」と表現していたわけではありませんが、まずやってみる、失敗してもトライしてみる、そしてそれを堂々とやることが、不確実な時代・答えがない時代の希望となるのではないかと思います。

たとえば、建築家の豊田啓介さんは「あらかじめ共有されている正解を求めて動くのでは立ち行かないのがいまの価値領域」であり、「正解などないけれど、『とにかくやってみよう』と動き出して失敗を恐れず堂々と遊ぶ、新しいことに挑戦してみることが必要」だと語ります。

建築家・豊田啓介さんがコロナ禍で語る、「遊び」が日本の未来に与える価値
建築家・豊田啓介さんがコロナ禍で語る、「遊び」が日本の未来に与える価値 Photograph by Kazuma Hata

「共創」や「イノベーション」という言葉は、これまで擦り切れるほど使われてきました。果たして本当の意味での共創を行い、新しいアイデアをもとにイノベーションを起こせた企業は日本にどれほどあるのか、自戒も込めて感じています。
共創やイノベーションの名のもとに立ち上がった事業や部署はうまく機能しているか、機能するような仕組みはつくれているか、新たな価値体系の浸透は十分なのか……。課題は多くあります。
組織のなかにいると、「自分一人が思ったところで何もできない」と思う人もいるかもしれません。確かにこれまでの仕組みや価値体系のなかで組織を動かそうと思うと難しいことも多くありました。しかし、リモートワークが進み、成果によって評価されていくであろうこれからの組織では、一人の発信が大きな推進力を生むことが増えていくのではないでしょうか。

たとえば、アマナがご一緒しているNTTコミュニケーションズの共創コミュニティ「C4BASE」。さまざまな企業の方が所属しており、各企業が持つ技術やサービス、アイデアをかけ合わせることで、社会課題を解決するイノベーションの創出を目指していますが、大切にしているのは個性豊かな参加メンバーたちの「個人視点」です。従来の枠組みに当てはまらない働き方や考えを持つ参加者が多いからこそ、一人ひとりの個性や考え方を社会に接続していきたいという想いが根底にあります。
さらに、この取り組み自体はNTTコミュニケーションズにとっても比較的新しい事業。トラディショナルな企業で新しいことをやろうとすれば、風当たりが強いときもあるはずですが、それでも「C4BASE」の担当者の方々は常に新しい取り組みに前向きです。

新しいことにチャレンジしていると、新しい価値観(社会にとって新しいのか、組織にとって新しいのか、その粒度はまちまちですが)で考える時間が増え、おのずと体得していくようになるでしょう。そうやって手にした新しい価値観こそが、組織や社会、ひいては世界を変える原動力となっていくと思います。その証拠に、あらゆる分野で危機が顕著になったいま、コロナ禍においてもイノベーションに向かう歩みを止めない「C4BASE」のインパクトは、組織の中で少しずつ大きくなっているといいます。

リモートで共創は生まれるか? 企業のDXを支援するNTTコミュニケーションズの挑戦
リモートで共創は生まれるか? 企業のDXを支援するNTTコミュニケーションズの挑戦 Photograph by Kazuma Hata

新しい価値観を持ち、アップデートし続け、発信すること。社内に仲間をつくること。そして社外にも同志を見つけ、自分一人だけ、自社だけではできなかったことをどんどんやっていくこと。一朝一夕にはできないことばかりではありますが、それでも、まるで遊ぶようにチャレンジし、ポジティブに失敗し、新しい領域を探究する。それがいま、多くの企業に必要なことなのではないでしょうか。

アマナでは、企業のパートナーとして、クリエイティブな思考を持ちながら新しい領域へのチャレンジをどんどん広げていき、「VISUAL SHIFT」では、その取り組みや、そこから見える景色を発信し続けたいと思っています。

PROFILE

徳山夏生

「VISUAL SHIFT」エディトリアルディレクター
徳山夏生

「VISUAL SHIFT」エディトリアルディレクター
徳山夏生

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了。2016年アマナ入社、2018年より「VISUAL SHIFT」にてブランディング、マーケティング、テクノロジー、アートなど幅広い分野の企画・編集・ライティングを担当。2020年より同メディアのエディトリアルディレクター。

MEDIA

VISUAL SHIFT

VISUAL SHIFT

VISUAL SHIFTは、企業の課題を解決するヒントをクリエイティブ視点で紹介するアマナのオウンドメディア。ビジネスに役立つ基礎知識や事例、各分野のキーパーソンへのインタビューをお届けします。