いのちを終えてもつづく。自分だけの道を往く皆川明の創作力

いのちを終えてもつづく。自分だけの道を往く皆川明の創作力
Text by Misuzu Yamagishi
Photographs by Mutsumi Tabuchi

憂うことはなにもない。
自由にあらゆるスタイルで、
心のままに絵を描く

ブランド設立から2020年で25周年を迎えたミナ ペルホネン。「自分のやるべきことで人生は満たされている。一生のうちにできないことは、次世代につなげばいい」と皆川明は考え、ミナ ペルホネンは長い道のりを歩んできた。

デザイナー、ディレクター、経営者でありながら、皆川は個人としても新聞の連載小説のカット、雑誌や絵本、様々なものづくりを行っている。ひとりの人間ができるとは思えぬほどの仕事を、日々、こなす。「机の上には描きかけの図案、テキスタイル用のスケッチ、新聞のための絵など、その時やるべき仕事がすべて載っていて、同時進行でこなします。効率を考え、手の動くもの、躊躇しないもの、迷わないものから進めます。締め切りがありますから、ともかくきちんと完成させます」と軽やかに語る。

絵を描くことは好きだったが専門的に学んだことはなく、それがとてもよかったという。「ブランドを始めるまで自分の絵に対する評価がなかったことで、どんな絵も自由に描くことができます。心や感情のままに、スタイルも線も好きに描いています。見る人にも、自由に受け止めていただければうれしいですね」。

思い立ったらすぐ描きたくなってしまうから、紙の種類や大きさは問わない。モチーフもさまざま。そして描き出したら止まらない。
思い立ったらすぐ描きたくなってしまうから、紙の種類や大きさは問わない。モチーフもさまざま。そして描き出したら止まらない。
思い立ったらすぐ描きたくなってしまうから、紙の種類や大きさは問わない。モチーフもさまざま。そして描き出したら止まらない。

課題を恩恵と受け止め、
少しずつ解決し継続していく

これまでの軌道は順調だったのだろうか。「うまくいかないことも含め、順調でした。どうしたらもっと良くなるのか、今も日々、考えています。問題があり、解決するという課題を与えられている。そのことをありがたく思います」。さらりと気負いなく語る裏には、地道で並大抵でない努力をしてきた潔さと、すがすがしさがある。

継続させる。その想いの背景には、ファッションという消費されるシステムへの反発もある。「つづけることで、ファッション=はやりすたりのある、水のようなもの、という空気を断ち切りたいのです。ずっとつづけると決めた時、これは大切な要素でした。自分の一生を越えて、自分の手の届かないところまでやる。自分ができなければ次の人にゆだねればいい、と、気を長く持った結果です」。その姿勢は、20年前に購入された服も長く愛用して欲しいから、修繕や直しもよろこんで受け付ける、というシステムにも結実している。

モチーフとなる自然を大胆に解釈する。刺繍をふんだんに使ったミナ ペルホネンの服の美しさ。
モチーフとなる自然を大胆に解釈する。刺繍をふんだんに使ったミナ ペルホネンの服の美しさ。
モチーフとなる自然を大胆に解釈する。刺繍をふんだんに使ったミナ ペルホネンの服の美しさ。

長く続けるために大切なことはなにより、信頼感だという。「働く上で重要なのは、経済的なことはさておき、さまざまな形で生まれる信頼感です。それは仕事をして得られる大きなよろこびだと感じます」。工場と、消費者と、クリエイター同士で。無数につながる人と人の間で生まれる信頼やきずなは、日々の目的でもあり、問題解決のための大きなカギでもあるという。

皆川が自分の時代に行ってきたのは、ブランドを開始し、縫製工場との良い関係を作り、布からデザインして服にするまで、そのプロセスと態勢をきちんと整えたことだ。さらにその世界を様々なものづくりに発展させ、発酵させる状態にした。「今は発酵が少し進んで空気に触れ、活発に動いている状態です。熟成は自分の人生の先にあると思っています」。

ミナ ペルホネンの定番テキスタイル「tambourine」を用いたカップ&ソーサー。
ミナ ペルホネンの定番テキスタイル「tambourine」を用いたカップ&ソーサー。

25年からその先へ。

消費では意味がない。記憶や感情が重なってゆくものづくり、それが作り手と受け手の生きるよろこびになっていく。ものづくりをしている時が一番楽しいから、仕事も余暇も息抜きも、同じ意味を持っている。暮らしからものが生まれるから、仕事も生活も分けて考えてはいない。この先、成し遂げたいことは。「次の人につなげること。私と考えの異なる人もいますが、次世代のスタッフには精一杯、自分の考えを深めて欲しいですね」。

優れた働きをする人の仕事は、「祈り」にも似ていると思う。自分も、他者も、あらゆる命が生きていることを心からよろこび、感謝し、謙虚で、つねに自らに厳しく仕事をし、豊かな成果をもたらす。その成果に、私たちは美しさと価値を見出し、大いに励まされる。そんなミナ ペルホネンがずっとつづくことは、うれしく、大きな幸福だ。

米国の出版社 Rizzoli New Yorkより発行された、ミナ ペルホネンのビジュアルブック「ripples」。 「ripples(さざ波)」と名付けられた書籍は、ファッションからライフスタイル、テキスタイルの原画などまで収録。ミナ ペルホネンの各店で購入すると、和訳冊子が付く。9,570円

>> Premium Japan、一生を越えてつづく。皆川明の道のり(前編)へ

転載元:Premium Japan、一生を越えてつづく。皆川明の道のり(後編) いのちを終えてもつづく。自分だけの道を往く皆川明の創作力

PROFILE

皆川明

皆川 明

皆川 明

1967年生まれ。1995年に「minä perhonen」 の前身である「minä」を設立。ハンドドローイングを主とする手作業の図案によるテキスタイルデザインを中心に、衣服をはじめ、家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど、日常に寄り添うデザイン活動を行っている。デンマークKvadrat、スウェーデンKLIPPANなどのテキスタイルブランド、イタリアの陶磁器ブランドGINORI 1735へのデザイン提供、新聞・雑誌の挿画なども手掛ける。

ミナ ペルホネン
https://www.mina-perhonen.jp/

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