今日から実践できる、“真の企業課題”の見つけ方

今日から実践できる、“真の企業課題”の見つけ方
Text by Kodai Murakami
Photographs by AKANE
Retouch by Tomoko Kusamura
Art Direct by Mitsuru Katayanagi
Edit by Natsuki Tokuyama

企業の課題と向き合うことは、自分たちのウィークポイントを探る行為でもあるため、ときに痛みを伴います。しかし、そのアクションがなければ前進はありません。では、具体的にどのように課題をとらえればいいのでしょうか。課題設定を見誤る企業の傾向をふまえながら、正しい課題の見つけ方について、さまざまな企業の課題と向き合ってきたアマナの杉山諒が解説します。

課題設定を見誤る企業の5つの傾向

うまく進行していないプロジェクトは、往々にして課題設定を見誤っていることがあります。そうした企業がよく陥ってしまうのが、次の5つの状況です。

1.「WHY」が抜け落ちている
仮にトップダウンで「DXを推進せよ」という課題が設定されたとき、「DXを推進する」ことばかりにとらわれるのではなく、「なぜDXを推進するのか、何のためにDXが必要なのか」を考える必要があります。目的と課題を明らかにしたうえで、どのような道筋で、どのような手段を使うのかを検討しなければなりません。「そもそもなぜこの施策に取り組むのか?」という疑問を持ち、常に「WHY」に立ち返ることができるようにしましょう。

2.チームの一人ひとりが腹落ちしていない
チームのうち、たった一人課題設定ができているだけでは、チームとして同じ方向へ進むことが難しくなり、空中分解してしまう可能性があります。携わっているメンバー全員が自分ごととして課題を認識し、同じ方向へ向かうことが大切です。プロジェクトスタート時に課題についての解像度を高くし、認識をすり合わせたり、推進するプロセスにおいても共通認識を形成するポイントをいくつも用意しておきましょう。

3.ポジショントークに終始してしまう
さまざまな立場の人が同じプロジェクトに取り組もうとするとき、それぞれの立場やリソースを優先してしまい、本来解決すべき課題を見失うことがあります。新しいことへ取り組もうとするとき、既存の業務や都合の良いことのみに終始するだけでは、仮に正しい課題を設定できていたとしても解決することは難しいでしょう。まずは互いの立場を取っ払って課題についてまっすぐ向き合う姿勢も大切です。

4.目の前の業務しか見えていない
どんなに意味のあるプロジェクトであっても、実践段階になると目の前の業務で手いっぱいにな手いっぱいになり、「なぜこの業務に取り組んでいるのか」という目的を見失うことがあります。担当業務を行いながらも、いかに参加メンバーが大義を大切にしながら業務に取り組めるかがプロジェクト成功の鍵を握ります。 

5.先行事例の表面的な部分をなぞろうとしてしまう
いま自社で取り組もうとしている課題の先行事例を参考にするのは非常に良いことです。前例から参照できることは多々あると思いますが、気をつけたいのが、表面的な見え方や手法にばかりに目が向いてしまうこと。まず先行事例がどのような課題と向き合ったのかを把握したうえで、どのようなやり方でどのようにして課題解決に導いたのかを分析し、自社の状況と照らし合わせながら参照していく必要があります。

企業課題と向き合うときの一番の障壁とは

とはいえ、課題に取り組む人の半分以上は上記のことは理解できているように思います。では、なぜ本来向き合うべき課題が設定できていなかったり、できていたとしても、解決に向かうことができないのでしょう?

その原因として、こうした状況に陥ってはいけないことを理解しながらも、実現することができない事業があることが考えられます。それは社内の決まり事や制度、慣習にまつわる問題であったり、リソースの問題であったりしますが、条件に縛られすぎていては課題と向き合うことは難しいでしょう。企業にとって本当に解決すべき課題なのであれば、まず障壁となる事柄を取っ払うために行動する必要があります。実はこれが非常にハードな仕事の場合も多々。ウィークポイントを解消することのみに注力するのは厳しい場合もありますが、目指すべきゴールを具体的にイメージしておくことが大切です。

正しい課題設定のための5つの視点

では、実際に課題をとらえ直すとき、どのような視点を持っておくべきなのでしょう。私たちが課題を抽出するために行なっているのが、既存の枠組みを外して、違う枠組みで見直すことを指す「リフレーミング」です。実際に行なっているリフレーミングは、以下の5つ。

1.課題を因数分解する
課題の粒度が荒いと抽象度が増して具体的な行動に落とし込むことができない場合も多いでしょう。細かく分解することで、課題のコアがどこにあるのかがはクリアになっていきます。

2.大義を考える
課題を因数分解するときに忘れてはいけない両輪的な視点です。課題の粒度を細かくする一方で、「何のために課題を解決するのか」という大義を忘れてはいけません。大義が見つからない場合は、前述の「WHY」を突き詰めてみるといいでしょう。

3.批判的に考える
考えることに没頭しているとついつい視野が狭くなりがちです。バイアスをかけて物事を捉えることを防ぐために対立する案を考え、あえて批判的な目線を持つことも大切です。

4.尺度を変える
自社の視点だけでなく、BtoB事業の顧客や、その先のエンドユーザーなど、さまざまな視点に立って議論することで視点が多様化し、課題に対する理解度が深まります。

5.プロセスを問い直す
考えに考え抜いたことでも思わぬ抜け漏れがある場合もあります。何度もプロセスを問い直すことでアイデアは鮮やかを増します。

また、議論が白熱している間は近視眼的な思考になりやすいこともありますが、議論から一度離れて情報が抜けるので、新鮮な気持ちで向き合うことができるため、それまでと違った視点が見つかることもあるでしょう。

リフレーミングは課題を設定するときに有効ですが、決して万能薬ではありません。「これを用いれば誰もが正しい課題を設定でき、解決へ導ける」というメソッドは存在しないのです。なぜなら、同じような課題であっても、企業や組織構成、時期などによって対策は千差万別だからです。シミュレーション段階ではうまくいっていたけれど、実務段階で行き詰まってしまう、なんてことはよくある話。仮に課題設定がうまくいっても、すべての課題をうまく解決できるともかぎりません。まずは行動してみて、ダメなら軌道修正をかけていく。関わるメンバーで同じゴールを描きながらも、何度もしつこく挑戦する。それくらいの心持ちで臨むのが良いでしょう。

掲載元:VISUAL SHIFT、今日から実践できる、“真の企業課題”の見つけ方

PROFILE

株式会社アマナ クリエイティブコンダクター・プランニングディレクター
杉山 諒

株式会社アマナ クリエイティブコンダクター・プランニングディレクター
杉山 諒

企業のブランディングや、新規事業開発など、デザインやアートの思考を用いて、企業のさまざまなプロジェクトを担当。テクノロジーを軸に、イノベーションの可能性を拡張するデジタルクリエイティブラボラトリー「FIGLAB」にも所属。また社会のクリエイティブ人材を増やすことを目的とした研修プログラム「amanaCreativeCamp」を開発 / 担当。

Contributor:AKANE・叢 智子|AKANE・Tomoko Kusamura(amana)

普段は見落としがちな、課題設定の大切さ。
言われたがままにただひたすら突っ走るのではなく、ちょっと一歩下がってみる。違う部署の人と話してみる。大胆に全く別の事を考えて見る。
フィルターを取っ払って、ミックスジュースのようにアイディアをかき混ぜ合わせたら、新たな可能性がどんどん広がっていく。
課題の設定次第で見え方も変わるという事を二つの世界を対比させ、表現した。
amana visual | AKANE

MEDIA

VISUAL SHIFT

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VISUAL SHIFTは、企業の課題を解決するヒントをクリエイティブ視点で紹介するアマナのオウンドメディア。ビジネスに役立つ基礎知識や事例、各分野のキーパーソンへのインタビューをお届けします。