資生堂|より良い未来をつくる、社会貢献に取り組むブランド

資生堂|より良い未来をつくる、社会貢献に取り組むブランド
Edit by Arina Tsukada
Text by Natsuki Numao
Illustration by Atsushi Ito

近年、サステイナブルな地球環境や多様な社会を目指して、さまざまな社会貢献に取り組む企業やブランドが増えています。それぞれの企業はどんな姿勢で未来を考え、行動しているのでしょうか。

世界の約120の国と地域で事業を展開している資生堂。そんな資生堂が多様な人々の生きる社会に向けて行っているのが、子ども一人ひとりの肌の色を精密に計測し、その子どもの「肌色」を忠実に再現したクレヨンを製作する「資生堂マイ・クレヨン・プロジェクト」だ。社会の多様性や、それぞれの持つ個性と違いを伝えるプロジェクトの全貌とは?

資生堂|より良い未来をつくる、社会貢献に取り組むブランド

肌色はひとつじゃない

近年、実はクレヨンや色鉛筆から「肌色」が姿を消しているのをご存じだろうか。メーカーが「肌」の色をひとつの色で定義してしまうことであらぬ差別を招くという声が高まってきたからだ。しかし、依然としてほとんどの日本人はその言葉を当たり前のように使い、日本人の79%(*注)は「肌色」を薄いだいだい色とイメージしている。とはいえ実際は日本にもさまざまな肌の色の人がいる。そこで、世界でも最先端の皮膚科学技術を持つ資生堂が、子どもたちにダイバーシティや一人ひとりの個性について考えてもらうきっかけを与えられないかという思いから、「資生堂マイ・クレヨン・プロジェクト」がスタートした。肌の研究を100年以上続けている資生堂が出した答えは、「肌色」は人の数だけあるということ。その数、なんと70億色以上。はたして、「肌色」とは何だろうか?

肌の測定器を使い、それぞれの子どものこまかな肌の色の違いを計測する資生堂の研究員。
肌の測定器を使い、それぞれの子どものこまかな肌の色の違いを計測する資生堂の研究員。

「『資生堂マイ・クレヨン・プロジェクト』は、資生堂のクリエイティブチームが自主的に始めたプロジェクトです。今、世界的な潮流でもあるダイバーシティへの取り組みに関して、日本が後れを取っていることへの課題に対し、デジタルの技術を使って何か新しいコミュニケーションができないか、という議論の中から生まれました。

資生堂の研究所であるグローバルイノベーションセンターには、世界中の人を対象に肌の調査や研究をしているチームがあります。彼らは高度に解析できる肌の測定器を使い、人それぞれの肌の色の違いを調べています。リサーチを続けるうち、世界には一人として、まったく同じ肌の色の人は存在しないという研究結果に辿り着きました。そして、その事実に気づくことで、自分らしさに誇りを持ち、異なる他者を受け入れることにつながるのではないか、という仮説を立てました。そこから一人ひとりの肌の色を測定し、そのデータをもとにした個々の肌の色のクレヨンを作る、という具体的なアイデアが生まれてきました。その後、さまざまなルートを辿って、微妙な肌の色を作り分けてくれるクレヨンの会社を探しました。実は、クレヨン製作はすべて職人の手仕事によるものです。測定器から検出された数値を参考にしながら、職人の勘を頼りに、多くの種類の肌色のクレヨンを作っていきました」(資生堂クリエイティブ本部 小助川さん)

一人ひとりのユニークさに気がつく

この取り組みを多くの児童に体験してもらうため、全国各地の小学校に出向き、出張授業というかたちのワークショップも行っている。授業では4人でひとつのグループを作り、まずは既存のクレヨンの中から自分の肌に近い色を選ぶことから始める。自分の肌の色はどの色のクレヨンと近いのか? クレヨンの色を研究員と選び、そこに自分の名前を書き込む。その後グループ内でのディスカッションを重ね、それぞれの「違い」を意識し、そのクレヨンで自画像を描くことで、子どもたちが自己肯定感を育むきっかけになることを目指している。

子どもが描いた自画像を黒板に一斉に張り出すことで、自分と周囲を見比べてみる機会を創出した。
子どもが描いた自画像を黒板に一斉に張り出すことで、自分と周囲を見比べてみる機会を創出した。

その子どもの「肌色」を忠実に再現したクレヨンは、人にはそれぞれ「個性」という違いがあること、個性は色や姿形だけではなく、考え方や価値観すべてに存在していることを伝えたいという思いが込められている。子どもたちは、世界にたったひとつのクレヨンで、自分の顔の絵を自由に描くことで、完成した絵を周囲と見比べた時、友達とは違う自分の個性や自分らしさに気がつくだろう。

「小学校への出張授業は、私たちにとっても学びが大きいものでした。さらに嬉しいことに、自身のユニークネス、友達の一人ひとりが違うことへの発見など、子どもたちにも新しい気づきがあったようです。この授業は横浜市の教育委員会でも報告され、それを耳にした市内の小学校の先生たちからも多数問い合わせが来ています。現在、活動は資生堂のクリエイティブ本部を中心としたボランティアで行っているため、あまり多くの数をこなせないのが実情ではありますが、少しずつ資生堂の社内からも応援の声が増え、追い風が吹くようになってきました。今後は一気に認知を広げるよりも、地道に活動を続けることで、資生堂という企業の姿勢を社会に少しずつ浸透させていければと思っています」

*注…2017年12月6日~7日に実施したWebアンケート調査(有効回答数:520)によるもの

子どもの肌の色を測定して作ったクレヨンには、それぞれの子どもの名前が書かれている。
子どもの肌の色を測定して作ったクレヨンには、それぞれの子どもの名前が書かれている。

掲載元:Fasu(旧:MilK JAPON WEB)、連載『より良い未来をつくるために』02.資生堂|より良い未来をつくる、社会貢献に取り組むブランド (雑誌『MilK JAPON』Autumn/Winter 2019 No.39 より抜粋)

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