3密を避けて楽しむ、これからの写真と観光

霧のサンフランシスコ
Text by Sachiko Takahashi
Photograph by Kenji Yamamura [TOP]

世界中の誰もが、外出がままならなくなった今回のコロナ禍。風景写真のプラットフォーム「PASHADELIC(パシャデリック)」でも、SNSで遠出できないことを嘆く声が聞こえたり、ユーザーからの写真投稿が減るなど、その影響がうかがえました。
しかし自宅で過ごす時間を有効に使って過去に撮影した写真を見直したり、今後の撮影に役立つ情報を積極的に集めようとする動きも感じられます。
今、PASHADELICユーザーは何を思い、何を欲しているのか。今後求められる事象、提供していくべきコンテンツについて考察します。

のべ30万枚の風景写真が集まるコミュニティサイトとして

PASHADELICは、風景写真を愛好するフォトグラファーのためのコミュニケーションツールとして、代表の山村健児が2012年に創業しました。当時はSNSの発展期。写真の世界ではそれまで、自作のホームページやブログに自身の作品を載せている人が多かったですが、TwitterやFacebookの隆盛と共に、プロアマ問わず写真を「シェアする」という文化も広がっていきました。

一方、写真を撮影するツールとしてデジタルカメラの画質が向上し、さらに今ではスマートフォンでもデジカメに迫る機能を持ち始めたこと、また通信環境の向上により、データの大きな画像もためらいなくサーバーにアップすることが可能となりました。

Photograph by Kenji Yamamura
@Kenji Yamamura

数多くの風景写真の傑作がネット上で閲覧できるようになったことによって、その風景が「いつ」「どこで」見られるのか知りたいというニーズが高まりました。PASHADELICでは、サイト上に自身が撮影した風景写真をアップし、そこに「いつ」「どこで」「どのように」撮影したのかという情報を付け加える機能を持ち、生の情報交換ができる場として成長してきました。

と同時に、SNSでもサイトにアップされた写真を紹介することによって、撮影する人だけでなく、風景写真を見て楽しむ人も増え、現在では6万人のユーザーを抱える風景写真のコミュニティサイトとして成長してきました。サイトに登録されている写真はのべ30万枚にのぼります。

誰もが楽しみにしていた桜の撮影シーズンをコロナ禍が直撃

今回の新型コロナウイルス感染症は、風景写真家にも大きな影響をもたらしました。海外はもちろん国内でも地域間の移動が制限されたことにより、フォトグラファーたちは撮影に出かけることができず、悶々とした日々を過ごしています。

しかも新型コロナが蔓延し始めた3月は、写真家たちがもっとも楽しみにしていた桜の季節の直前。東京の桜名所はもちろん、愛媛県の紫雲出山(しうでやま)、青森県の弘前城など、風景写真の定番ともいえる桜の撮影地は人が集まらないように次々と閉鎖されていきました。撮影に行けないのは、仕事で撮影をしているプロ写真家たちも同様です。今年の春の各地の絶景は、地元に住む人たちがひっそりと楽しむだけのものとなりました。

紫雲出山 / 香川県三豊市
紫雲出山 / 香川県三豊市 @Masahiro Iizuka
弘前城 / 青森県青森市
弘前城 / 青森県青森市 @Kazuhiro Yashima

PASHADELIC pressでは3月20日に「この春会いに行きたい、絶景の一本桜 2020」という記事を配信。まだ全国に緊急事態宣言が出される前で、写真家たちが今年の桜はどこに撮影に行こうかと情報を集めていた時期ということもあり、多くのアクセスがありました。しかし自粛が始まって以降もアクセスは伸び続けました。今度は「見に行くことが叶わないなら、せめて写真で楽しもう」という人や、時間ができて「来年のための情報を集めておこう」と考える人が増えたためと思われます。

実際、GW中の5月4日に配信した長野の初夏の風景を紹介する「47風景ぐるり旅 初夏の北アルプスと田園風景(長野県白馬村)」も、多くの人に読まれた記事です。今すぐに撮影に出かけることができない中でも、気分をあげてくれる景色を見たい、今のうちに撮影情報を集めておきたいという前向きなニーズを感じました。

今後、新たな人気スポットが分散して発掘される可能性も

現在は新型コロナで移動が制限され、観光産業が大きな打撃を受けていることは誰もが知っているとおりです。もちろん風景写真家たちのあいだでも緊急事態宣言前から、感染を広げないために移動を伴う撮影を自粛する機運が生まれました。しかし基本的には、自家用車で移動し、人の少ない空気のきれいな自然の中で撮影する風景写真は、今言われている「3密リスク」は比較的低いといえるでしょう。

もちろん、人が過度に集中する特定の人気スポットでの行動には注意が必要です。しかし移動の自由さえあれば、風景写真は感染症リスクの観点からも安全な趣味として、その人口はますます増えていくかも知れません。さらに、これまでは例えば、ある定番撮影スポットには日の出の時間帯に三脚がズラリと並ぶといった現象が起きていましたが、今後は混み合う場所を避け、オリジナルな撮影場所を求める動き、穴場の撮影地へのニーズが高まるように思います。

PASHADELICユーザーの中には、地方に在住し、地元の風景の魅力を発信しているフォトグラファーも多く存在しています。そうした方々とともに日本各地の風景の魅力を積極的に掘り起こし、コンテンツとして提供していきたいと考えています。

快適なアウトドアライフで撮影環境も充実?

また市場調査(*)では、コロナ後は人との接触を減らす新しい旅行スタイルが求められるという予測もあるようです。たとえばアウトドア型の宿や一棟貸し切りの宿泊施設といった少人数型のニーズが高まると予想されています。もともと、風景を撮るフォトグラファーは日の出や星の撮影のため早朝や夜中に出発するなど、一般の観光客とは行動時間帯が若干異なっています。そのため他人に気兼ねのない「車中泊スタイル」を取る人も多くいます。PASHADELIC pressの記事でも昨年取り上げましたが、充電設備や入浴施設などを備えた「RVパーク」のような、車中泊やアウトドアを好む人たちのための施設の需要がさらに高くなるのではないでしょうか(2019年9月26日配信「車中泊をもっと楽しく快適に! RVパーク活用法」)。

穂高岳山荘 / 長野県松本市
穂高岳山荘 / 長野県松本市 @ZAKE_photo

今後もPASHADELICは、ユーザーニーズを捉えた風景写真コミュニティサイトとしてさらなる発展を目指すと共に、そこから生まれるコンテンツの提供によって地域おこし、観光ビジネス、環境保全など、写真がつなぐ新たなビジネスの可能性を模索していきたいと考えています。

*参考文献
・熊本県観光協会連絡会議「新型コロナウイルス感染症収束後の旅行・観光に関する意識調査・調査報告書
・トラベルズー・ジャパン「緊急事態宣言解除後の旅行意向に関する調査

PROFILE

山村健児

「PASHADELIC」創業者/アウトドアフォトグラファー
山村健児

「PASHADELIC」創業者/アウトドアフォトグラファー
山村健児

アメリカのカリフォルニア州にあるビッグ・サーにて、一枚のポストカードに魅せられて始めた風景写真が2013年1月。以来、アメリカ・アイスランド・ 北欧・ニュージーランドなど世界を飛び回りながら絶景を撮り続けている一方で、風景写真に必要な3つのレシピ「いつ・どこで・何が撮れるのか」を共有する写真サービス「PASHADELIC」を創業。SNS では15万人以上のフォロワーがおり、インフルエンサーとしても活躍をしている。

MEDIA

PASHADELIC

PASHADELIC

PASHADELICとは、“写真ライフをもっと楽しく“をミッションにした、絶景写真を撮影するためのコミュニケーションプラットフォームです。世界中のフォトグラファーと美しい風景写真を共有し、撮影の奥深さや楽しさを発信し続けています。